~ゼロから学ぶ 大人のための経済学入門~

はじめに

 

人間の持つ根源的な欲求は、自分も幸せになりたい、自分の大切な人も幸せにしたいという気持ちです。そもそも、資本主義社会とは、人間の限りない欲望を原動力に、限りのある資源を使って経済を回すという矛盾を含む考え方を土台にしています。

しかし、良い点もあります。資本主義では、だれもが資本家になれるチャンスが開かれています。お金を稼ぐには、働いて稼ぐ労働所得と、働かないで稼ぐ不労所得の2つがあります。経済をあえてゲームに例えると、人はまず労働者として働き(レベル1)、お金をためて投資し(レベル10程度)、いずれは資本家になる(億り人)ことを目指します。資本家になれれば、ゲームの攻略、すごろくでいうところの”あがり”です。40歳までにゴールできれば、それをアメリカンドリームとか、ジャパニーズドリームなどと呼びます。ラスボスを倒したイメージです。

会社は、労働(経済学ではLというアルファベットを使います)と資本(経済学ではKというアルファベットを使います)という2つの生産要素を使用して経済活動を行います。一緒に働いてくれる仲間(労働者)、会社の資本設備や運転資金を出してくれる投資家(資本家)のどちらが欠けても経営は成り立ちません。

ゲームにはエンディングがあるから、そこを目指してがんばることができます。資本主義を否定することは、ゲームからエンディングをなくすことを意味します。どこまで何時間プレーしても、永遠に終わらないだらだらとしたゲームを、人が続けることができるでしょうか。

資本主義は、世界で2番目に最低なシステムであるといわれます。社会主義(共産主義)よりはましだが、ただそれだけのことだという意味が込められています。

良くも悪くも、私たちはフリードマンの唱えた新自由主義経済、資本主義社会に生きています。そして、資本主義のもとでは、みなが労働者からスタートし、資本家というゴールを目指して走っていきます。この激しい競争社会のなかで、より効率的な生産技術や、人々の生活を劇的に変えるような新サービスが生まれ、同時に人間も成長するという考え方です。だれもがゲームをクリアーできるわけではないところ、みなが同じスタートラインからの競争でないところなど、多くの問題もありますが、個人の効用を最大化する行動が、結果として社会全体を最適へと導くシステムが資本主義社会のダイナミズムと言えます。

このサイトでは、資本主義社会を支えている新自由主義経済について、新聞や雑誌よりは詳しく、専門書よりはやさしく、マンガやイラストを交えながら解説していきます。

一の巻 経済学とは人間の意思決定を研究する学問

さくら
さくら

経済学って難しそう・・・。わたしでも理解できるかな~

小先生
小先生

まあ、難しいだろうな~。私のように天才的に頭がよくなければ!

さくら
さくら

そうですよね・・・。

つばき先生
つばき先生

大丈夫。私たちの日常で、経済と関係のない日なんてないんだから。

難しく考えなくていいのよ。

さくら
さくら

そうなんですね。よかった。

経済学を本格的に学ぶのって初めてで・・・。勉強するうえで、気をつけるべきことってありますか。

小先生
小先生

一にカネ!二にカネ!三四がなくて、五にカネ!

とにかくカネを意識することだな!

つばき先生
つばき先生

経済学は社会科学の一領域なのよ。社会科学とは、人間の活動を研究すること、なかでも人間の意思決定に焦点を当てるのが特徴よ。

わたしたちの日常とは、突きつめると、刻々と変化する外部環境に対して、ひたすら意思決定を繰り返しているだけなの。この意思決定がどのようなメカニズムでなされているのか、どうすれば最適な意思決定をできるかを解き明かそうとしてるの。

大先生
大先生

そうじゃな。最近の行動経済学という学問では、多くの人々が、よりよい意思決定ができるように、社会にいろいろな仕掛けを組み入れ、背中を押してあげる「ナッジ」という概念が定着しつつあるぞい!

二の巻 ミクロとマクロ ~新自由主義経済の時代~

さくら
さくら

経済学には「ミクロ経済学」と「マクロ経済学」というふたつがありますよね。どう違うのかな~。う~ん。

小先生
小先生

「ミクロ経済学」が小銭の研究、「マクロ経済学」が札束の研究という意味だな!

つばき先生
つばき先生

ぜんぜん違います。ミクロ経済学は「企業の経済学」「短期の経済学」「小さな政府」「競争社会」といったイメージです。いっぽうのマクロ経済学は「国の経済学」「長期の経済学」「大きな政府」「協調社会」といった感じですね。現代社会は新自由主義経済がスタンダードになっていますから、ミクロ経済学が大勢といってもいいでしょう。

さくら
さくら

なるほど~。競争と協調ですか。う~ん、いい意味での競争はライバルと切磋琢磨しあいながらお互いががんばれるきっかけや励みになるから大切な気もしますが、行き過ぎるとギスギスしたり、格差が生まれそうで心配ですね。

つばき先生
つばき先生

そうね。みんなが同じスタートラインから競争するのなら新自由主義社会は理想的といえるかもしれないわね。でも、いまは生まれながらの格差が残念ながら生じているし、格差の固定化も問題視されてるわ。意外かもしれないけど、日本は相対的貧困率がかなり高く、この指標でみると世界有数の格差社会といえるの。見えざる手が機能する前提が、残念ながら成り立っているとはいえないわね。

小先生
小先生

ははは~。わたしは、恥も外聞もなく、見えざるほど早い右手の動きで、自販機の下や裏側をあさり小銭を発見するという特技をもってるぞ。この奥義をなんなら特別に今だけ1万円で伝授してやろう。ありがたく受講しなされ。

つばき先生
つばき先生

格差を是正するための議論は全世界でなされてるの。でも、現実は富める者はさらに富み、そうでないものはますます困窮しているの。ベーシックインカム制度など、早急に格差是正のために舵をきらなければ、近い将来、世界は大混乱に陥ることも懸念され始めれるわね。

大先生
大先生

そうじゃな。昨年のアメリカの大統領選で、トランプ氏とバイデン氏がそれぞれ共和党と民主党を代表して争い拮抗したように、大きい政府か小さい政府かという選択は難しい問題じゃな。

三の巻 資本主義社会と効用最大化について

さくら
さくら

わたしも幸せになりたいです。たくさんはいらないけど、たまに贅沢できるくらいのお金もあるといいな~

小先生
小先生

それなら、わたしのような天才投資家になることを目指すのだな。

さくら
さくら

どうすればなれるんですか?

小先生
小先生

おおまけにまけて、大サービスで教えてやろう。人をだましたり、嘘をついたり、貶めてみたり、一生懸命、全力で、遠慮なく他人の足を引っ張り、蹴落としながら、上を目指して進んでいくこと。這い上がろうとするやつは、打つべし、打つべし、打つべし!

つばき先生
つばき先生

資本主義社会はだれもが資本家になることを目指して競争するところにダイナミズムがあるのは確かね。でも、完全競争の前提があって、見えざる手は機能するの。ルールは少ないほうがいいという意見もあるけど、完全競争社会を実現・維持するための最低限のルールは必要ね。何をしてもいいってわけじゃないのよ。

さくら
さくら

みんながいい意味で切磋琢磨しながら、世の中もより楽しく、過ごしやすくなるんだったらいいですね。

大先生
大先生

経済では幸せのことを効用と呼び、人々は効用最大化のために生きていると考えられておる。個々人が、それぞれ自由に効用を最大化しても社会が乱れるどころか、よりよい社会になる、競争を制限することが、かえって社会全体にとってはマイナスであることを論理的に説明しているのが経済学ともいえるんじゃな。

四の巻 無差別曲線と予算制約線について

さくら
さくら

わたし、日常生活のなかで効用最大化って意識して行動してることってないな~。無意識のうちに実行してるのかな~?

つばき先生
つばき先生

そうね。効用最大化を意識することがあるとすれば、それはいつも買ってる商品の価格が高くなったり、安くなったりしたときの自分自身の反応に気づいたときかもね。

さくら
さくら

値上げは嫌ですね~。高くなったら、ちょっと買うのをためらいますね。

つばき先生
つばき先生

そうなの。高くなったら、通常、他の代わりになるものを買おうとする効果が見られるわ。これを代替効果と呼びます。

さくら
さくら

そうですよね~。高くなると、買いたくなくなります。でも、いろんなものが高くなると生活が厳しくなるので、節約するためにも、価格に関係なく、贅沢な外食とかを控えようかな~って気持ちにもなります。

つばき先生
つばき先生

いいところに気づいたわね。そうなの。物価の上昇は価格が変化していない他の商品にも影響を与えるの。物価の上昇で国民の生活が厳しくなってくると、上級な商品は買われにくくなるし、下級な商品の売れ行きが伸びることになるわね。これを所得効果と呼ぶわ。

小先生
小先生

なんだ、さくらは生活が厳しいのか~。はやく私に相談すればよかったのに。このわたしが夜なべして作った幸運の壺(定価100万円)を、おおまけにまけて99万円で売ってやろう。これを買えば、問題ナッシング!いまなら金利手数料ゼロ!

つばき先生
つばき先生

効用最大化は、人間の消費行動を分析するうえでの基礎になる考え方ですので、しっかり学習してくださいね。

さくら
さくら

はい。しっかり学習してみます。

五の巻 価格弾力性と所得弾力性について

経済学には、客観的な分析と主観的な分析の2種類があります。

客観的な分析とは、だれにも平等で同じである価格です。完全な独占状態であれば、メニューに値段を書かず、お客さんを見て価格を決めることもできるでしょうが、実際は、そうは行きません、せいぜい映画館の大人料金と子ども料金などの差別価格を設定することが精いっぱいで、通常はどのようなお客様であれ、みな同じ値段で購入することになります。

また、どのようなお金持ちでも、商品の値上げは、損した気分になりますし、値下げはお得な気分にさせてくれます。

消費者余剰とは、その商品に支払ってもいいと考える値段と、実際に支払う金額との差の集積とされます。したがって、値下げは消費者余剰の拡大を意味します。

いっぽうで、日本のみならず、このコロナ禍においてますます所得の格差が拡大しているというニュースが報道されています。所得とは一人ひとり、世帯単位ではかられますので、かなりの格差があります。

所得はそれぞれのご家庭によって違いますので、こちらはかなり主観的な要素に影響を与えることが予想されます。

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